麒麟がくる 第12回「十兵衛の嫁」 感想



もはや主役よりも主役らしい帰蝶さまの活躍が全てを浚っていってしまった。わたしは帰蝶ファンなので良き(^^)
 
 今年の大河は美濃パート、尾張パート、京パートが一話の中で描かれることがあるのだが、正直見づらい。今回大きなヤマ場をみせた尾張パートに対して、東庵が博打に負け続けるお約束の京パートはあまりにも軽い。軽すぎた。伊呂波太夫が借金四十貫文(約四百万円)をぽんと肩代わりしてくれて、ほいほいと尾張へ向かうなら、最初から闘鶏場面はあきらめて(鳥づくしにしたかったんだろうけど……一番下をみてくださいまし)、帰蝶からの手紙ですぐに尾張へ旅立てばよかった、と思う。


サブタイ詐欺

今回のタイトルは「信長の嫁」
異論はないと思う。信長・帰蝶というアクの強い戦国夫婦が全て持っていってしまった。

天文二十年(1551)
尾張では刻々と織田信秀(信長パッパ)が終焉のときを迎えようとしていた。末盛城の信秀のもとへ信長と帰蝶も呼ばれる。そこで「末盛城は信勝に、家老に佐久間をつける」「信長はそのまま那古野城にとどまり引き続き平手とともに力を尽くせ」と信秀から言い渡される。信長は最前線の末森城にあればこそ力も尽くせようが、那古野城でどう力を尽くせというのか、と納得できない。
織田信秀は普通の国衆や大名と違って本拠を持たず、絶えず最前線に城を作って居住していたのです。勝幡(しょばた)→那古野(ここはすぐにノッブに与える)→古渡→末森
信長もこの方法を踏襲して、那古野→清洲→小牧→美濃(岐阜)→安土と移動していくのでありました。

控えとして宛てられた部屋の前の廊下で夫を待つ帰蝶。信長に「いかがでございましたか」と尋ねると、信長は帰蝶に背中を向けたまま(帰蝶は入側で立ち尽くしている)、
「父上はこの城を信勝に与えられるそうじゃ。佐久間も、お気に入りの柴田勝家も。大事なものはすべて信勝のものじゃ」
「おかしゅうございますね。大事なものは(家督である)殿にお与えになるべきでは」
何か信秀の判断には理由があるのではと帰蝶は再考を促すが信長は全く気づかない。
「此(こ)は母の企みじゃ」
「あの剛毅な父上様が母上様にさほどに甘いとは」
帰蝶は冷静に尋ねるが、興奮した信長は全く親の真情などは考えない。
「甘い~、甘い、あまい、アマイ、AMAI」
「二年前に松平広忠の首をとらせたのも、今川との和議を平手にやらせたのも、全て父上に褒めていただきたいからじゃ。なのにただただお叱りになるのじゃ。たわけと仰せられるのじゃ……なにゆえかわかるか。母上が不服を唱えられたからじゃ、父上は母上の言いなりじゃ」
涙ながらに手を振り回し地団駄を踏み、叫び散らす。
染谷ノッブの怪演が今回もピカピカ光っております。泣きながら喚く夫の背中をみて「ふぅー」とため息をつき、決意の表情を浮かべた帰蝶は信秀の居室にゆく。
優しくノッブを抱きしめたりせず怜悧で勝ち気な帰蝶さまはまず自分で正確なことを知ろうとしたのです。

「この織田家を継ぐのはどちらがふさわしいのでしょうか。父上さまの胸の内をおきかせください。信長さまと信勝さまどちらがふさわしいとお考えですか」
「わたくしは尾張に命をあずけに参ったおなご。預けるのがどれほどのお方かなんとしても知りとうございます。父上さまにとって信長さまがどれほどのお方かお聞かせください」
唇を動かす信秀。顔を寄せて言葉を聞き取る帰蝶の目からぽろぽろとこぼれる涙。


いやーとても美しい場面でした。
ゆるゆると「行け」と手を振る信秀。立ち去った帰蝶は信長の待つ部屋へ。扇で顔を隠して不貞寝する夫wに、信秀の言葉を告げる。
「信長は儂の若い頃にとても良く似ている、瓜二つじゃ。まるで己をみているようじゃ。良いところも、悪いところも。だから儂は信長がとてもかわいい」

「尾張を任せる。強くなれ」

信長は振り向いて表情を決めかねて帰蝶をみる。
帰蝶は信長ににっこりほほえむ。信長は次第に表情が明るくなり、力強い笑顔を帰蝶に見せる……ってなんてこの二人は上手いんだー。
信秀はこんなに喋っているようには見えなかったので、多分帰蝶がかなり創作していたのだと思う。

「……かわいい」だけで信長の反応がいまひとつだったので、えいもう一丁、とばかりに「尾張を任せる、強くなれ」を付け加えたのだと勝手に想像して楽しんでます。ええ。

数日後、東庵先生のお供をして、お駒ちゃんが那古野城にたずねてきたとき、美濃へいくという彼女に帰蝶は十兵衛が嫁取りをした、と伝えます。
ここで知ってから美濃に入ったほうが、傷つき方が少ないだろう、という帰蝶なりの思いやりでしょう。でも彼女はどこからこの情報を得ているのか(ちょっと怖い)。

お茶バトルまたの名を鳥尽くし

その美濃では土岐頼芸から贈られた鷹で利政の近習が命を落とすという事件が勃発。
自分は暗殺しても、されることはないと考えている利政の傲慢さがよき。
折しも明智城では主役の光秀と煕子が祝言をあげて、叔父光安と母まきに挨拶をしている。ここおかしかった。親族総出での祝いの席になるはずなのに、登場人物が少なすぎで主役とは思えぬ。婚礼場面もたったの1カット。白無垢と狩衣姿のふたりはヤマ場になるんじゃないのかすら……「光秀の嫁」だし。
そして稲葉山城から狼煙があがり、登城すると暗殺未遂の一件が利政から語られる。
利政大演説 シェークスピアか
「儂の身代わりとなったこの若者の血を凍らせてしもうた。誰の仕業と思う」
はあの山から贈られてきた。が神仏の如く敬うてきた土岐様から何故儂が殺されなければならぬ」
集められた国衆は何も言わない。全員、「当然だ」と思っていそうで怖い(笑)
光秀は義龍から利政討伐を再度もちかけられ、固まる。
伊●衛門VS●鷹

戦国メルヒェン夫婦

「久しぶりに外に出て、迷ってしまい。空を見上げると、空は青かった(記憶あやふやです)」
「ほんとに。静かな音がします」
「静かな音?」
「耳を澄ますと、空には静かな音がします」

ポエムか。確かに戦国乱世に染まらず理想を追い求める夫婦の会話として描かれているのだろうが、あまりにもあまりにも薄っぺらくないですか。
そして信長・帰蝶夫婦が一筋縄でいかないたくましさを既に醸し出しているのに、このふたりってば生活力絶無な感じ。こりゃ、髪も売るよね。しのき得心。

今回、信秀さん最後でした。大きく温かい信秀をありがとうございました。高橋克典さん、お疲れ様でした。

蛇足の補足……鳥づくし、おわかりいただけましたでしょうか。
鷹・鷺(鷺山城)・わし(儂)・鶏(闘鶏)

コメント

このブログの人気の投稿

渓斎英泉のお墓へ

麒麟がくる 第13回 「帰蝶のはかりごと」感想

2020年はセルパブ元年