麒麟がくる 第13回 「帰蝶のはかりごと」感想


控えめにいって帰蝶さまとノッブの夫婦サイコー、な回でした。
帰蝶さまの美しさ、賢さ、父道三譲りの胆力を満喫。
ノッブも任せるところは奥さんに任せてしまうスケールの大きさを感じました。
そして帰蝶の札びらで顔をひっぱたくようなドS演技を、圧倒されていく伊呂波太夫のきめ細かい表情の変化で見事に受けた尾野真千子さん。
他に、道三もやっぱりよかった。見応えありました。以下感想です。ネタバレします。

利政、相手の心を折る名人芸を披露

守護土岐頼芸追放
十兵衛は土岐頼芸と一戦交えるのは、家族が真っ二つに別れて闘うことになるから反対だ、と利政の前で喚きます(これだけが今の所十兵衛の芸です)。
対して利政は一戦交える気はないが、美濃の国衆に喝を入れるためにああいった、と本心を語ります。
「美濃の守護などという役に立たぬお守札はさっさと捨てて自分の足で歩かねばならない」
「土岐様には穏やかに美濃を出ていっていただく」
翌日、見事な鷹狩日和に晴れ上がった朝、土岐頼芸は飼育していた鷹が全て絞め殺されているのをみて完全に闘争心を打ち砕かれる。映像が美しく余計に残酷さが際立ちました。
結果、土岐頼芸は現実逃避から六角氏を頼って美濃を出ていきます。

高政に現実と真実を突きつける
目の前で土岐頼芸が逃げていくのをみた高政は父親のところに怒鳴り込む。
深芳野相手に酒を飲んでいた父をお前呼ばわりし、「まことの父を喪うたのじゃ、その口惜しさおわかりになるまい」と詰め寄る。それに対し、「そなたの父は……儂じゃ。油売りから身を起こした成り上がりものの子で、蝮と陰口を叩かれる下賤な男がそなたの父じゃ」と言い放って高政の自尊心を粉砕します。謀反を堂々と父の前で口にしても何も処罰されないのですから、やはり実父なのだろう、と思うのですがどうでしょう。

藤吉郎登場

猿です。背が高いけど藤吉郎です。爽やかイケメンですが藤吉郎です、と木に登らせたり歯をむき出して笑わせたり、最後はニホンザルの映像まで入れて視聴者への刷り込みを企んでました。お駒ちゃんにのみすり寄っていっているのは、女好きの予告ね。

平手(まさかの)ナレ死

主人夫婦にこき下ろされるおまけ付き。
信秀死後すぐに織田家では造反が始まる。
「まことに恥知らずなお身内たちでございまするな」
「身内ほどあてにならぬものはない。平手の爺はそれを身に沁みて感じたと申しておった」
「平手殿は清洲の彦五郎様を手なづけてみせると自信満々でおでかけになりましたがあの始末じゃ」
帰蝶は平手のこと嫌ってましたからね。美濃からの応援が来ないって知った時点で平手の冷ややかな顔付きを彼女は見逃してなかったってことですね。
「腹切って見せれば心開くという連中ではない。平手は早まった」

全く悲しまない(笑)容赦ない夫婦。平手成仏できんがな。
何でも最新の研究が反映されているそうで、勉強したいです。2016年当時はそういう論(彦五郎説得に失敗して自刃)はなかったと思います。

帰蝶P誕生(ノッブをプロデュース)

上述のとおり、信長は非常に危うい立場にいて、利政は婿殿に会うといいだします。
帰蝶から告げられた信長は自分の現状を冷静に分析していき、会見にいけば殺されるかも知れない、だから「いかない」と帰蝶にいいます。
帰蝶は「それでは臆したと思われ、同盟は破綻する。わたしは美濃へ戻らねばなりません。よろしいのですか」と信長に湯を差し出しながら尋ねます。一瞬?という顔をして、二回瞬き(染谷さんほんと達者)してから、彼女の手から茶碗をもぎとり、自分の手を重ねます。

茶碗をもぎとり、自分の手を重ねるノッブ
©NHK麒麟がくる
帰蝶は信長から伊呂波太夫が兵を斡旋することを聞き出します。
©NHK麒麟がくる
清洲へ伊呂波太夫を訪ねた帰蝶は、根来から鉄砲を撃てる傭兵を借りてほしいと依頼しますが、最初太夫は「急ぎではまず無理でございましょう」と拒絶します。と、帰蝶、ちらっと隣で控えていた侍女をみて袋を受け取ります。
袋の中には小袋が5つ。4つまでをつまみあげては足許に落とし、伊呂波太夫の表情を楽しげに観察します。最後の1袋。袋の口をあけ、手付じゃ、と、ざあああああと筵の上にこぼしていきます。この楽しそうな顔。
ほうれ手付じゃ。うきゃきゃ
©NHK麒麟がくる
この伊呂波太夫と帰蝶の駆け引きは大河屈指の名場面として語り継がれていくでしょう。

会見当日の朝、衣装箱に用意されていた帰蝶の選んだ衣装は、「いつもどおり」の衣装。
「これではいつもどおりではないか」という信長に
「父は古きものより新しきものを好みます。また美しきものも好みます。そのどちらも兼ね備えていれば満足いただけるでしょう(ちょっと違うかも)」

うしろにノッブもいます。お着替え中
©NHK麒麟がくる
「できることは全てやり、あとはその場の勝負。これは父上とわたしの戦じゃ」
と莞爾と微笑む帰蝶に向かって
「儂の戦を横取りするつもりか」
と返す信長。さいこーに痺れました。絵的にアレですが。
でも、視聴者はノッブといえば漁師のような格好か、きちんとした直垂姿か羽織袴姿しかみてないので、このド派手な袖なし羽織と短い小袖は鮮烈でした。色がきれいでしたねー。今回の大河は衣装は凝ってますが、帰蝶さまのお衣装少なすぎ。ノッブのほうがたくさん持ってる。

父利政の謀略を阻止できなかったために最初の夫を喪ってしまった帰蝶は、その轍は踏むまい、とおそらく閨で夫の了解をとりつけ、金をださせて、伊呂波太夫に掛け合い、信長を守ろうとしているのでしょう。光秀にもよしなに頼むと文を送ります。
このあと、信長は見事な隊列を組み隙見していた利政を圧倒するのは周知のとおり。
野外ロケが壮観でしたね。
枯れ草ばっかりだったのが残念でした。旧暦四月二十日といえば五月の下旬。濃尾平野は滴るような緑に包まれていたはずです。脳内変換して観るべし。


為すべきことはしたのでお茶をのみつつ夫の帰りを待つ帰蝶
©NHK麒麟がくる

夫を正徳寺(本編では聖徳寺)へ送り出したあと、ひとりで待つ帰蝶。
これが今回の象徴的なショットなのだと思います。
背景に注目 織田木瓜(おだもっこう)
織田の女として生きる決意をした帰蝶。いや、織田家を背負うのかな。これから信長は桶狭間という大一番がありますからそのときの帰蝶の活躍が楽しみです。


付け足し 蝮の血族(利政ー高政ー帰蝶)

もっとも泥臭く品がないのが利政で、高政は夢見がちで小心な青年で脆いひと。帰蝶は父親の血を強く引いていて、胆力があり、結構下衆で野卑な部分も持ち合わせているというところでしょうか。

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